2025.04.23
障がいのあるお子様をお持ちのご家庭にとって、「親なき後」に子どもをどう支えていくかは非常に大きな課題です。
その備えの一つに「家族信託」があります。
今回はその概要とポイントをご紹介します。
◆ 障がい者のために『家族信託』を・・!?
障がいのあるご家族のために家族信託を活用する際の前提として、親なき後に「受託者」として信頼できる親族が、財産の管理を担いながら支援を継続できる体制が必要です。
障がいのあるお子様を信託の実質所有者たる「受益者」とし、経済的な基盤を残しておくことは、親として生前に取り組んでおきたい対策の一つといえるでしょう。
この場合、家族信託には主に次の目的があります。
(1)「親の認知症対策」…
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親自身の認知症に備える必要性も考慮し、認知機能が低下した後でも、成年後見制度に頼らずに受託者が財産管理を行えます。
(2)「生前の財産移転と管理」…
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信託契約によって財産を生前に移し、受託者には管理権限を与えることができます。
信託の開始時期は「認知症と診断されたとき」などの条件付きで設定することもできます。
(3)「遺産分割の円滑化」…
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障がいのある方(障害者)が相続人に含まれると、分割協議が難航することがあり、(遺言書も併用して)家族信託を活することで、分割協議を不要とすることができます。
特に精神障がいのある方(精神障害者)がいる場合は、慎重な検討が必要です。
(4)「将来の財産の承継先を指定できる」…
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「受益者連続型信託」では、財産の最終的な承継先まで指定できるので、障がい者向けにも有効とされています。
障がいのあるお子様を「第二受益者」とし、その方が亡くなった後は受託者やその子どもなど、別の家族へ財産を移転(相続)させることも可能です。
◆ 『家族信託』の注意点とリスクは・・!?
家族信託では、信託開始時点では親を「受益者」とし、障がいを持つ子どもは「第二受益者」として将来的に受益権を相続で引き継ぐかたちにするのが一般的です。
これにより、贈与税の課税を回避できます。ただし、相続税については原則として避けられないため、節税対策としても、信託銀行等が安全に財産を管理・運用する『特定贈与信託』なども併せて検討するとよいでしょう。
『特定贈与信託』では、特別障がい者であれば6,000万円まで、その他の特定障がい者でも3,000万円まで贈与税が非課税になる制度です。
もし、相続直前の贈与となっても、相続税の課税財産から除外することができます。
一方で、次のようなリスクや注意点もあります。
1. 受託者が先に亡くなる可能性
(→「第二受託者」の設定が必要)
2. 他の相続人の遺留分を侵害するおそれ
(家族信託が遺留分対策になることもありますが、意図的な回避と判断されれば一部が無効となるケースも)
3. 受託者による不正のリスク
4. 「30年ルール」による信託の自動終了
(信託設定後30年経過後に新たに受益者となった人が亡くなった場合、信託が終了)
5. 信託の設計や運用(信託計算書など)、所得税・相続税の申告など実務面の手間や負担
―――などです。
これらのリスクや注意点を踏まえた上で、信託の設計・運用は、弁護士・司法書士・税理士などの専門家と連携しながら進めることが重要です。
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