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2023.08.09
日本では、相続税の累進負担を回避しようとする行動を抑制するため、贈与税はより累進構造が重くなっていることが、相続税や贈与税の租税回避行為が拡大している一因であると分析されています。
そして、高齢者層に資産が集中し、若年層への資産移転が進みにくくなっていて、今までも「相続税と贈与税の一体化」が議論され、「資産移転の時期の選択に、より中立的な税制の構築等」が求められてきました。
そこで、令和5年度税制改正で『相続時精算課税』などの見直しがなされました。
また、マンションを利用した過度な節税策も議論が本格化し(日経新聞でも紹介、後日詳解…)、来年からの生前贈与は大きく変わろうとしています。
◆ “相続時精算課税”の使い勝手向上はかられ・・・!
このような観点から、「資産移転の時期に中立的である」といわれる相続時精算課税の使い勝手の向上がはかられました。
相続時精算課税の制度の特徴は―――
【1】適用できるのは、その年1月1日現在60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対する贈与です。
【2】 この制度を選択した年以降の贈与財産の合計が累積で2,500万円を超えるまで贈与税は課されず、超えた段階から一律20%の税率で贈与税が課されます。
【3】 贈与者が亡くなった時にその累積贈与財産を相続財産に合算した金額を基に相続税を計算し、既に納めたその贈与税は控除されます。(孫などの受贈財産は2割加算の対象に…。納付した贈与税の方が多ければ相続税は還付になることもあります。)
これに対し、相続時精算課税制度のデメリットとしては―――
(1)手続きに期限があり、以降の贈与についてもすべて申告義務があり(期限後申告では 2,500万円の特別控除枠は使えません…)
(2)いったんこの制度を選択すると『暦年課税』へ変更(戻すこと)はできず暦年課税の基礎控除(年間110万円)も無くなります。
(3)不動産贈与では、相続ではかからない不動産取得税がかかる場合があり、登録免許税も若干高くなります。
(4)相続税の申告時に加算するのは贈与時の価額のため、価格が下落しても、財産が滅失しても、贈与時に申告した額を相続税の課税対象に加算しなければなりません。
(5)贈与した財産は、物納に供することも、小規模宅地等の特例や空き家の譲渡所得の特例の適用もできなくなる、などの点が挙げられます。
今般の改正で、令和6年からは上記(2)と(4)に対して改善がなされます。
(2)については、相続時精算課税においても年110万円の基礎控除が創設され(年110万円以内なら申告は不要、期間に関係なく持ち戻しも不要…)(4)に対しても、同制度で贈与を受けた土地・建物が災害で一定以上の被害を受けた場合は、相続時に再計算することができるようになります。(令和6年以後の災害被害から適用。株式やその他財産は対象外…)
◆「申請手続きのイメージ」は…!?
法務省のHPで掲載されている「相続土地国庫帰属制度のご案内」等で、手続や審査の流れが公表されています。
それによると―――
1. 申請に不安がある場合は事前に法務局(本局)に相談(予約制)
2. 該当の土地の境界点にポール、プレート、テープ類などを設置
3. 申請書の提出は土地を管轄する法務局の本局に持参か郵送(共有の場合は共有者全員で)
4. 申請後に現地調査への同行を求められる場合があり(代理人に依頼可)
5. 半年から1年程度で承認・不承認(却下)
―――が決まります。
なお、弁護士、司法書士、行政書士は、申請者本人に代わって申請書類の作成を代行できますが、申請書に作成者を記載する必要があります。
ただし、この場合も申請者は土地の所有者自身になります。
(未成年後見人や成年後見人等の法定代理人は、代理人の名前で行うことができます。)
また、事前の測量等は不要(図面の作成は必要)とのことで、農地の申請でも農地法3条1項に基づく農業委員会の許可取得は不要とのこと…。
なお、審査手数料は、土地1筆当たり14,000円(収入印紙の貼付で納付)です。
この手数料はいかなる理由があっても返還されません。
(申請者が亡くなった場合は、相続等があった日から60日以内の手続きで継続審査に…)
◆承認後に「負担金」の納付が必要…!
審査によって承認されると、土地の性質に応じた標準的な管理費用として10年分の土地管理費相当額を納める必要があります。
法務省HPに「負担金の自動計算シート」の掲載がありますが、負担金の通知が到達した翌日から30日以内に納付する必要があります。
納付した時点で、土地の所有権が国に移転し(登記は国の方で行い)ます。
負担金の金額の計算例では、市街化区域にある200平方メートルの宅地で約80万円、1,000平方メートルの森林で約26万円が必要になります。
なお、却下事由や不承認事由が存在する土地について、事実を偽ったり不正な手段によって承認を受けたりしたことが後に判明した場合は、その承認は取り消され、負担金は没収されます。
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