最近の投稿

  • 『利用価値が著しく低下している宅地』の評価

    2021.05.31

    相続税、贈与税の申告に際し、国税庁のHP「タックスアンサー」でも紹介されているのが『No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価』で、奥行距離や不整形の度合いなどによる画地調整を行った上で、更にこの「利用価値が低下していると認められる部分は10%の評価減」が認められています。

    納税者にとっては有り難い規定ですが、実際の申告では否認リスクを考慮しながら適用の可否を判断せざるを得ず、悩ましい規定でもあります。

     

    ◆「利用価値が著しく低下している」とは?国税庁HPで紹介されているのは・・・?

    1】道路より高い位置にある宅地又は低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの

    2】地盤に甚だしい凹凸のある宅地

    3】震動の甚だしい宅地

    4】その他、騒音、日照阻害、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けるものと認められるもの

    ── となっています。

    注意すべきは、「ただし、路線価又は固定資産税評価額又は倍率が、利用価値の著しく低下している状況を考慮して付されている場合には斟酌(しんしゃく)しません。」としていて、ここの分析と判断が現実には難しいものとなっています。

     

    ◆「線路横の列車の騒音による利用価値低下」・・・?

    昨年12月に公開された国税不服審判所の裁決事例の中で、「列車走行の騒音により、利用価値が著しく低下しているとする宅地評価」で、納税者側の主張(10%減評価)が認められた事例があります。

    しかし、その中では3つの要件が示されて検討されていて―――

    (1)路線価における騒音要因の斟酌(路線価が設定された路線は線路から離れていたことから、斟酌無しは異論がなかったようです)

    (2)騒音の発生状況(土地の周囲に防音壁など無く、環境省の「在来鉄道騒音指針」にほぼ準拠した方法で納税者側が騒音を測定して指針値を超えていることを立証)

    (3)騒音による取引金額への影響(取引金額にも影響する固定資産税評価額を調べたところ騒音要因で減価補正が行われていた)

    ――― とここまでやって、(国税不服審判所で)やっと納税者の主張が認められたようです。

     

    (付近より)著しく高低差のあるもの」?

    また、もっとも多くの事例として出会うのは、上記【1】の「付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの」ですが、これを理由とする10%評価減は現実にはなかなか難しく、納税者の主張が認められなかった平成24年の裁決事例などを見ると、その適用には慎重にならざるを得ません。

    それによると、「路線価は、基本的に価額に影響を与える土地の高低差は考慮されており、原則として、路線価の評価とは別に土地の高低差を個別に斟酌する必要はない」というように、国税サイドでは基本的に路線価に織り込み済みと見ているため、単純に付近の路線価との比較だけで可否を判断することはできないのです。

Copyright © 2007-2015税理士法人アイ・ブレインズ 横浜事務所 All Rights Reserved.