2025年 4月 23日

  • 相続土地国庫帰属制度』は如何に!?

    2025.04.23

    相続により取得したものの、利用予定のない不動産は、相続人にとって悩ましい問題となります。
    2023.06.2の相続コラムでもご紹介したとおり、こうした不要土地の所有者不明化を防止するため、『相続土地国庫帰属制度』が2023年4月より施行されました。
    制度の現状等を概観いたします。
    法務省の発表によると、制度開始から本年2月末までの約2年間で、全国の申請件数は3,462件。
    地目別では田・畑が最も多く1,320件、次いで宅地1,219件、山林537件などが続いています。
    審査の過程で何らかの理由により取り下げられたのが546件ある一方で、国庫への帰属が認められた件数は1,430件。
    却下・不承認は106件と少なく、残る1,380件は審査中という状況です。

    ◆ 制度の概要は・・・!
    申請対象者は、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地を取得した者です。
    法務局が審査を行い、申請者の同意のもと関係省庁や地方公共団体、隣接地所有者等へ通知がなされます。
    これにより、地域における土地の活用や寄附受け入れの検討機会が設けられ、その後、国庫帰属が認められれば、土地の「10年分の土地管理費相当額」の負担金の納付が求められます。
    通知後30日以内に納付すれば、それ以降は国有財産として国が管理します。

    ◆却下・不承認の主な理由・・・!
    申請が「却下」された理由として最も多いのは、「法で定める添付書類の提出がなかった」ことが理由。
    申請には図面や現況写真など、細かく定められた添付資料が求められているからでしょうが、必要な添付資料が用意できない、ということは実は他に何か理由があったのかもしれません。
    他に「通路の用に供されている」「境界が明らかでない」「申請が申請の権限を有しない者」という理由が続きます。
    その他、「担保権や使用収益権が設定されている」というのも、却下理由となるようです。
    一方、「不承認」とされた理由では、「土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する」と、「国による追加の整備が必要な森林に該当した」の二つが件数として突出しています。
    その他、「国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する」や「民法上の通行権利が現に妨げられている」といった理由も見られます。
    なお、「崖(勾配が30度以上であり、かつ、高さが5メートル以上のもの)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要する」や「除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する」というのも理由とされます。

    ◆ 申請に際してのポイント・・・!
    ・申請前に法務局(本局)窓口での対面、電話、ウェブによる相談が可能です。相談票の書式やチェックリストも公表されており、申請書類の事前チェック依頼も、複数回の相談も可能です。
    ・承認申請書の作成代行が認められているのは、弁護士、司法書士、行政書士の3士業のみ。
    ・審査手数料は土地一筆14千円。土地区分が同じ隣接の筆は一筆とみなしての申し出も可能。
    ・標準的な処理期間は8カ月とされています。
    ・複数回にわたって共有持分を取得している場合、一つでも相続を原因としていれば適用可。
    ・負担金額の自動計算シートの提供もあります。
    ・却下や不承認となった場合でも、その原因(事由)を解消すれば再申請は可能です。

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  • 障がいのあるご家族のための『家族信託』!

    2025.04.23

    障がいのあるお子様をお持ちのご家庭にとって、「親なき後」に子どもをどう支えていくかは非常に大きな課題です。
    その備えの一つに「家族信託」があります。
    今回はその概要とポイントをご紹介します。

    ◆ 障がい者のために『家族信託』を・・!?
    障がいのあるご家族のために家族信託を活用する際の前提として、親なき後に「受託者」として信頼できる親族が、財産の管理を担いながら支援を継続できる体制が必要です。
    障がいのあるお子様を信託の実質所有者たる「受益者」とし、経済的な基盤を残しておくことは、親として生前に取り組んでおきたい対策の一つといえるでしょう。
    この場合、家族信託には主に次の目的があります。
    (1)「親の認知症対策」…
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    親自身の認知症に備える必要性も考慮し、認知機能が低下した後でも、成年後見制度に頼らずに受託者が財産管理を行えます。
    (2)「生前の財産移転と管理」…
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    信託契約によって財産を生前に移し、受託者には管理権限を与えることができます。
    信託の開始時期は「認知症と診断されたとき」などの条件付きで設定することもできます。
    (3)「遺産分割の円滑化」…
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    障がいのある方(障害者)が相続人に含まれると、分割協議が難航することがあり、(遺言書も併用して)家族信託を活することで、分割協議を不要とすることができます。
    特に精神障がいのある方(精神障害者)がいる場合は、慎重な検討が必要です。
    (4)「将来の財産の承継先を指定できる」…
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    「受益者連続型信託」では、財産の最終的な承継先まで指定できるので、障がい者向けにも有効とされています。
    障がいのあるお子様を「第二受益者」とし、その方が亡くなった後は受託者やその子どもなど、別の家族へ財産を移転(相続)させることも可能です。

    ◆ 『家族信託』の注意点とリスクは・・!?
    家族信託では、信託開始時点では親を「受益者」とし、障がいを持つ子どもは「第二受益者」として将来的に受益権を相続で引き継ぐかたちにするのが一般的です。
    これにより、贈与税の課税を回避できます。ただし、相続税については原則として避けられないため、節税対策としても、信託銀行等が安全に財産を管理・運用する『特定贈与信託』なども併せて検討するとよいでしょう。
    『特定贈与信託』では、特別障がい者であれば6,000万円まで、その他の特定障がい者でも3,000万円まで贈与税が非課税になる制度です。
    もし、相続直前の贈与となっても、相続税の課税財産から除外することができます。
    一方で、次のようなリスクや注意点もあります。
    1. 受託者が先に亡くなる可能性
     (→「第二受託者」の設定が必要)
    2. 他の相続人の遺留分を侵害するおそれ
     (家族信託が遺留分対策になることもありますが、意図的な回避と判断されれば一部が無効となるケースも)
    3. 受託者による不正のリスク
    4. 「30年ルール」による信託の自動終了
     (信託設定後30年経過後に新たに受益者となった人が亡くなった場合、信託が終了)
    5. 信託の設計や運用(信託計算書など)、所得税・相続税の申告など実務面の手間や負担
    ―――などです。
    これらのリスクや注意点を踏まえた上で、信託の設計・運用は、弁護士・司法書士・税理士などの専門家と連携しながら進めることが重要です。

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