2025.02.21
相続税などで“通常の土地より大きな土地”の 評価方法で、適用に当たり曖昧な部分のあった「広大地」評価に代わり、平成30年から導入されました。
◆ 「規模格差補正率」を乗ずる趣旨・条件…!?
「地積規模の大きな宅地」の評価ができると、地積の大きさや三大都市圏か否かによって決まる「規模格差補正率」を乗ずることができるため、路線価をもとにした通常の(奥行価格補正や不整形地補正などの各種補正を行った後の)相続税評価額を更にその80%以下の評価額とすることができます。
これは、「戸建住宅用地としての分割分譲する場合に発生する減価(潰れ地や整備費用等の負担増)」を反映させるという趣旨から、三大都市圏では500平米以上の地積の宅地、それ以外の地域では1,000平米以上の地積の宅地であって、1.から4.を除くものに適用されるとなりました。
つまり―――
1. 市街化調整区域(但し、都市計画法34条10号又は11号による開発行為ができる区域は除く)
2. 用途地域が工業専用地域に指定
3. 指定容積率が400%(東京都の特別区内は300%)以上の地域
4. 倍率地域の大規模工場用地
―――が除かれます。
◆ 該当要件の判定等における留意点・・・!?
「地積規模の大きな宅地」に該当するかどうかで、財産評価基本通達における評価額が大きく異なり、生前対策としても検討すべきところとなります。
(1) 『面積要件は評価単位』…
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
地積規模の大きな宅地の判定は、土地の筆単位ではなく、評価通達に基づくその土地の「評価単位」ごとに行います。
それは、その土地の取得者別に、現況地目(宅地、田、畑、山林、雑種地など)ごとに行い、宅地は「利用の単位となっている1画地」で行うことを原則とし、農地のうち市街地農地などであれば、利用の単位となっている一団の農地を評価単位とします。
(2) 『共有地は全体で』…
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
複数の者で共有する宅地は、按分前の共有地全体の地積で判定します。
(3) 『マンション敷地にも適用可』…
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
広大地評価時代は「マンション適地」と判断されると評価減の余地はありませんでしたが、「地積規模の大きな宅地」評価ではマンション敷地も可能となり、マンション全体の敷地面積で判定します。
(4) 『容積率が異なる地域』…
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
評価対象地が指定容積率の異なる2以上の地域にわたる場合は、面積で加重平均して容積率を計算し判定します。
(5) 『路線価地域に所在する宅地』…
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
路線価評価を行う地域に所在する場合は、「普通商業・併用住宅地区」か「普通住宅地区」に所在していることが前提となります。
(6) 『倍率地域に所在する宅地』…
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
倍率地域に所在する場合、「大規模工場用地」に該当しなければ可能ですが、近傍の固定資産税評価に係る標準宅地(1平米単価)に宅地に係る「倍率」を乗じ、普通住宅地区とみなした「奥行価格補正率」を適用後に「規模格差補正率」を適用します。
(7) 『市街地農地等への適用』…
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
市街地農地・市街地山林・市街地原野などは、原則として宅地比準方式により評価します。
これらも戸建住宅用地として分譲する際は造成等に伴う減価が生ずるので、「地積規模の大きな宅地」評価は可能です。
なお、状況に応じて宅地造成費相当額も控除して評価することになります。
(ただし、宅地転用するには多額の造成費を要するため経済合理性の観点から宅地転用が見込めない場合や、急傾斜地などのように宅地造成が物理的に不可能な場合は「地積規模の大きな宅地」評価はできません。)
【横浜市・町田市・相模原市・大和市・川崎市で相続といえば、
アイブレ相続センター(税理士法人アイ・ブレインズ)へ】
2025.02.21
2024.12.10相続コラム掲載の 「今年から“相続時精算課税”始めますか?」】などでも書かせて頂いたように、昨年の贈与から暦年課税による生前贈与について相続時の加算対象期間が7年に延びる改正(増税)があったのに対して、相続時精算課税では年110万円の贈与税の基礎控除(減税)が設けられました。
従って、相続税がかかる親子の場合は、「余命を意識しつつ生前贈与するなら相続時精算課税制度“一択”」ともいえる時代となりました。
相続時精算課税は、「贈与者(直系の父母や祖父母など)が亡くなった時に、この制度を適用して生前贈与した財産を相続財産に加算して相続税の計算(精算)を行う制度」で、この制度を選択すれば、昨年の贈与分から相続時に加算不要な基礎控除110万円(非課税枠)が毎年認められることになります。
◆ 一般的な注意事項・・・!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
これから選択する場合の注意事項としては―――
(1) 特定贈与者(制度を選択した贈与者)との関係では“暦年課税”に戻すことはできない
(2) 2,500万円の贈与税非課税の特別控除枠を使う場合は“期限内申告”が要件
(3) 複数の特定贈与者がいても基礎控除額は110万円で贈与額での按分
―――となります。
◆ 贈与財産の値段が下がるリスク・・・!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
相続時精算課税では贈与財産は贈与時の価額によって相続税の課税価格に算入されます。
従って、贈与財産が金銭以外の場合、贈与財産の価値が上昇すれば節税になったことになりますが、下落すれば税負担が増加する可能性があります。
なお、贈与により土地・建物を取得しているときは、災害により一定の被害を受けた場合は被災額を控除できます。
その場合、災害発生後3年以内に申請が必要です。
◆ 制度選択した年の1月1日から適用に・・・!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
2024年の贈与分から適用する場合、特定贈与者との関係でいうなら、その年の1月1日以降のその者からの贈与全てに適用することになります。
これ以降、特定贈与者からの各年の全ての贈与額が(毎年の基礎控除を除き)相続時に加算されます。
慶弔や教育費などの非課税贈与を除く贈与や、“みなし贈与”となる経済的利益なども含まれることになるので、特定贈与者との不動産賃貸関係などがある場合には注意が必要です。
◆ 住宅取得資金贈与との併用と年齢制限・・・!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
住宅取得等資金贈与の非課税(省エネ等住宅で1,000万円)制度との併用が可能で、この場合には「(1月1日において)60歳以上の父母または祖父母」という相続時精算課税の贈与者の年齢制限が外れます。
なお、受贈者は1月1日において18歳以上という要件はあります。
◆ 贈与年に特定贈与者が亡くなった場合・・・!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
死亡年の贈与財産は相続税の課税対象となることから、贈与税の申告は不要です。
もし、相続時精算課税の基礎控除を超える贈与があれば、相続財産に加算して相続税を計算します。
ただし、昨年の贈与分だけ相続時精算課税(の非課税枠)を選択しようとする場合は、贈与税と相続税の申告期限のいずれか早い日までに、「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。
◆ 他の相続人から開示請求される可能性も・・・!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
相続税の対象となる贈与については、特定贈与者の相続時に、他の相続人が税務署へ開示請求することで、該当する贈与の合計額(基礎控除後の贈与税の課税価格)を確認することができるようになっています。(各年分ごとの開示はない…)
【横浜市・町田市・相模原市・大和市・川崎市で相続といえば、
アイブレ相続センター(税理士法人アイ・ブレインズ)へ】