2024.12.10
相続対策は―――
1. 相続税節減対策(節税対策)
2. 納税資金対策
3. 遺産分割対策
4. 安心老後対策
―――に分類されます。
この1.2.に共通するもので、最も簡単で即効性のあるのが“生前贈与”です。
日本の贈与税は“貰う人”が申告義務を負い、贈与税の計算上の基礎控除(非課税枠)も“貰う人”単位です。
特に手続きを行わない限り『暦年課税』が適用され、年110万円の非課税枠の範囲内の贈与だけなら贈与税の申告は必要ありません。
それを超える場合、超過した部分に累進税率で贈与税がかかり、翌年3/15期日の確定申告で申告します。
◆ [暦年課税] 贈与財産加算対象期間3年→7年!
ただ、“駆け込み贈与”による行き過ぎた節税策を防止し公平性を確保するために、「相続、遺贈によって財産を取得した人」に限定ではありますが、「相続開始前3年以内の贈与は(非課税枠内も含め)贈与時の価額を相続税の課税価格に加算」しなければなりません。
それが、税制改正により令和6年1月1日以後の暦年課税に係る贈与分からは、その加算対象期間が7年以内に延長(延長された4年間では総額100万円まで加算対象外)されました。
◆ [精算課税] 基礎控除の創設&加算不要…!
それに対して、政府税調の求める「資産移転の時期の選択に中立的な税制」として『相続時精算課税』の利用者を増やす方向性が決まり、令和6年の贈与から(暦年課税の110万円とは別枠で)相続時精算課税でも年110万円の基礎控除(非課税枠)が認められ、しかも、暦年課税では加算の対象となる相続開始前の一定期間の加算措置はないということで、相続時精算課税の優位性がハッキリしました。
ただ、相続時精算課税を採ることができるのは、贈与者は贈与の年の1月1日において60歳以上の親や祖父母などで、受贈者は贈与の年の1月1日において18歳以上の子、孫などです。
特定の贈与者と受贈者との間の贈与についてだけ、申告期限内に届出を出して選択します。
なお、基礎控除を超える贈与部分は、期限内申告が要件で累積2,500万円まで特別控除(非課税)があり、それ以外の場合は20%の税率で申告・納税が必要です。
ただ、特別控除額を含め将来相続の時に相続税の課税価格に加算(基礎控除は除き)され、贈与税は相続時に精算されます。(精算課税を選択した間柄では、それを後で暦年課税には戻せません。)
◆ 今年から相続時精算課税を選択するか…!?
今まで―――
(1)大きな金額の贈与をしたい
(2)将来値上がりし収益を上げるものを早期に贈与したい
―――場合などに、相続時精算課税を選択するケースが多かったところ、制度改正により
今後は―――
(3)長期間での生前対策が難しくなってきた場合
(4)基礎控除内しか贈与しないと決めている場合
(5)暦年課税と合計220万円に非課税枠を増やしたい場合
―――も選択することになります。
従って、少なくとも親と子の関係で言うならば「余命を意識したら相続時精算課税“一択”」とも言えるため、令和6年以降に親子などで相続人になり得る者に生前贈与を行う場合は、精算課税の選択を必ず検討する必要があると思われます。
なお、「あげる」と「貰う」の意思の合致、贈与履行の事実が大事で、資金贈与では、資金の管理・支配(使える状態)まで求められます。
但し、受贈者への教育的配慮も必要で、その場合、子が契約者となる「年払い変額個人年金保険」の活用もおススメです。
子の保険料引落し口座に親が事前に保険料相当額を毎年振込む方法です。
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2024.12.10
令和6年の贈与から、相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除ができ、同制度の使い勝手が格段に良くなりました。
逆に、暦年課税では「相続開始前3年以内の生前贈与加算」が7年に延び、ある程度の高齢者になると「生前対策として贈与税のかからない110万円贈与は、親子の関係であれば相続時精算課税制度“一択”ではないか…!」と言われるほど、同制度の優位性はハッキリしたと言えます。
◆ もともとの 相続時精算課税制度とは…!
相続時精算課税制度は平成15年に登場し、今と同じく「次世代への早期資産移転や有効活用」を目的としていながら、贈与者の年齢は65歳以上(現行は60歳)で、更に受贈者は子に限定され、「贈与税は無税でも贈与財産は相続時に加算される」ため魅力がなく、利用者は低迷していました。
平成27年に受贈者が孫まで拡大されましたが、大きな金額の贈与や値上りが期待される資産の贈与など、特殊な贈与をしたい方だけが選択するレアな制度というのは変わらず、利用者は低迷し続けていました。
◆ 現行相続税・贈与税の 看過できない事態…!
現在日本の相続税は「法定相続分課税方式」を採っていて、欧米が採用する「遺産課税方式」や「遺産取得課税方式」とは異なります。
良いところもありますが、必ずしも個々の相続人の相続額に応じた課税がなされていないなど問題点が様々指摘され、一時期、課税方式を変えるところから議論が交わされましたが、
結論としては現行の「法定相続分課税方式」は変えないということになりました。
ところが、現行の相続税の課税方式を前提とする暦年課税の贈与税については、生前贈与による相続税負担の回避を防止するため、相続税の税率より高く設定された累進税率が故に、生前贈与に対しては抑止的に働いている面があります。
しかし、高い相続税率が課される富裕層からすると、生前贈与の贈与税率は相対的に低くなるため、有税での生前贈与を繰返すケースも見られ、それが逆に優遇措置のように働いてしまっている矛盾(不公平)を、会計検査院が指摘したりもしています。
その上、経済社会情勢の変化で、日本では高齢者ほど多くの資産を保有し、“老々相続(相続人までも高齢化)”も増加しており、若年世代への資産の早期移転は国の重要課題となっています。
◆ 日税連の提言に沿って R5税制改正に…!
そのため、相続時精算課税へのシフトが予想される中、暦年課税の廃止まで噂され、そのようなときに、日本税理士会連合会から諮問に対する答申が出され、次のような提言がなされました。
それは、「資産移転の時期の選択に中立的な税制については、相続税と贈与税を一体化した仕組みが適していると考えられるが、これについても新たな税制を措置することなく、
現行の相続時精算課税制度について、制度上の問題点を見直すべき」とし、特に少額贈与の管理・記録等に係る執行上の問題に対処するため、相続時精算課税についても基礎控除を設けることを提言しました。
しかし、暦年課税についても制度は残すべきとし、相続開始前の駆け込み贈与を抑制する「3年以内生前贈与加算」は期間延長を提言しました。
なお、欧米の課税方式は、日本の課税方式に比べ、生涯や一定期間、生前贈与と相続では税負担が一定で「資産移転の時期に中立的」だと言われていて、「相続時精算課税」や「生前贈与加算の期間延長」はそれに近づけたものとなります。
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