2023年 9月 14日

  • 『名義預金』―親から子・孫への贈与財産―

    2023.09.14

    相続の調査で最も問題になるのは、今も昔も『名義預金』です。
    夫婦間では「管理・運用を配偶者に託する」という例は普通にあり、若干取扱いが異なりますので、今回は親から子・孫への贈与資金を原資とした『名義預金』に絞って見てみましょう。

    ◆ 『名義預金』となるかどうかの判断基準は・・・?
    『名義預金』の論点は、被相続人(死亡者)以外の名義の財産であっても、被相続人に帰属するものであれば、相続税の課税対象になる(取り込まれる)ということになり、もし税務調査となれば、その中でも“預金”についてがその重点項目となります。
    『名義預金』に当たるかどうかの基準には、一般的には次の項目で検討し総合的に判断されます──。

    (1)その原資の出捐(シュツエン)者は?
    ⇒「その資金を“拠出”したのは誰か?」という問題で、原資が被相続人以外の者と立証できれば、通常はもうそこで『名義預金』の争点から外れることになります。
    (2)その預金の管理・運用の状況は?
    ⇒日頃の通帳類の保管、入出金の手続きを誰が行っていたのか。
    (被相続人の配偶者が依頼されていたケースも結論は同じでしょう。)
    その管理・運用が、名義人に移ったのはいつなのか。(孫が未成年者の場合は後述)
    (3)贈与事実は?支配は誰が?
    ⇒“贈与”が成立するためには贈与の意思表示と受諾が必要(民法549条)で、しかし、書面によらない贈与で履行の終わらない部分は撤回できる(同550条)ことから、書面によらない贈与についてはその「履行の時」が贈与時点(相続税通達)とされます。
    従って、『名義預金』に関しては、通帳の管理をする者が親から子・孫に移り、子・孫が自由に引き出し(使用)できるようにならないと、履行が行われていない(贈与は成立していない)と判断されます。
    孫名義の預金の存在を子が知っていたとしても、日ごろの取引の経緯まで知らない状況では、それ以前に贈与が成立して『名義預金』ではなくなっていたと主張するのは難しいでしょう。

    なお、生前に預金の名義人に管理が移っていて、相続時点では『名義預金』では無かったと主張できるケースでも、基本的にその移った時期に預金残高全部の“一括贈与”があったことになり、その贈与に係る申告期限(翌年の3月15日)から6年以内【贈与税の時効】の場合は、110万円超では贈与税の期限後申告が必要となります。
    その上、贈与時点が相続の3年※以内の場合は、暦年課税では「相続開始前3年以内の贈与財産」として相続財産に加算する必要があります。
    (※税制改正により、令和9年の相続から順次4年、5年と延長され、令和13年からは7年に…)

    ◆ 孫が未成年者だった場合の取扱い・・・!
    親権者は、未成年者が成年(18歳)に達するまで、法定代理人としてその財産を管理する立場(民法824条)になります。
    従って、孫が未成年者のうちは、受贈者たる孫が贈与事実を知らなくても、その親権者(通常ご夫婦で)がその親との贈与契約の当事者となることが許されています。

    ◆ 税務調査となった場合の注意点・・・!
    相続税の税務調査が行われる場合、事実の確認が様々な角度から行われ、当局の主張に対し反証を求められます。
    ただ、『名義預金』に関する本来的な立証責任は課税当局にあるため、納税者が最終的に勝てた事案もありますが、調査過程では相当のエネルギーを要します。
    逆に『名義預金』と認定されれば、最悪は重加算税を課されるという結末もあり得るので、慎重に検討しましょう。

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