2024.12.10
令和6年の贈与から、相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除ができ、同制度の使い勝手が格段に良くなりました。
逆に、暦年課税では「相続開始前3年以内の生前贈与加算」が7年に延び、ある程度の高齢者になると「生前対策として贈与税のかからない110万円贈与は、親子の関係であれば相続時精算課税制度“一択”ではないか…!」と言われるほど、同制度の優位性はハッキリしたと言えます。
◆ もともとの 相続時精算課税制度とは…!
相続時精算課税制度は平成15年に登場し、今と同じく「次世代への早期資産移転や有効活用」を目的としていながら、贈与者の年齢は65歳以上(現行は60歳)で、更に受贈者は子に限定され、「贈与税は無税でも贈与財産は相続時に加算される」ため魅力がなく、利用者は低迷していました。
平成27年に受贈者が孫まで拡大されましたが、大きな金額の贈与や値上りが期待される資産の贈与など、特殊な贈与をしたい方だけが選択するレアな制度というのは変わらず、利用者は低迷し続けていました。
◆ 現行相続税・贈与税の 看過できない事態…!
現在日本の相続税は「法定相続分課税方式」を採っていて、欧米が採用する「遺産課税方式」や「遺産取得課税方式」とは異なります。
良いところもありますが、必ずしも個々の相続人の相続額に応じた課税がなされていないなど問題点が様々指摘され、一時期、課税方式を変えるところから議論が交わされましたが、
結論としては現行の「法定相続分課税方式」は変えないということになりました。
ところが、現行の相続税の課税方式を前提とする暦年課税の贈与税については、生前贈与による相続税負担の回避を防止するため、相続税の税率より高く設定された累進税率が故に、生前贈与に対しては抑止的に働いている面があります。
しかし、高い相続税率が課される富裕層からすると、生前贈与の贈与税率は相対的に低くなるため、有税での生前贈与を繰返すケースも見られ、それが逆に優遇措置のように働いてしまっている矛盾(不公平)を、会計検査院が指摘したりもしています。
その上、経済社会情勢の変化で、日本では高齢者ほど多くの資産を保有し、“老々相続(相続人までも高齢化)”も増加しており、若年世代への資産の早期移転は国の重要課題となっています。
◆ 日税連の提言に沿って R5税制改正に…!
そのため、相続時精算課税へのシフトが予想される中、暦年課税の廃止まで噂され、そのようなときに、日本税理士会連合会から諮問に対する答申が出され、次のような提言がなされました。
それは、「資産移転の時期の選択に中立的な税制については、相続税と贈与税を一体化した仕組みが適していると考えられるが、これについても新たな税制を措置することなく、
現行の相続時精算課税制度について、制度上の問題点を見直すべき」とし、特に少額贈与の管理・記録等に係る執行上の問題に対処するため、相続時精算課税についても基礎控除を設けることを提言しました。
しかし、暦年課税についても制度は残すべきとし、相続開始前の駆け込み贈与を抑制する「3年以内生前贈与加算」は期間延長を提言しました。
なお、欧米の課税方式は、日本の課税方式に比べ、生涯や一定期間、生前贈与と相続では税負担が一定で「資産移転の時期に中立的」だと言われていて、「相続時精算課税」や「生前贈与加算の期間延長」はそれに近づけたものとなります。
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