2025.01.16
文化庁によると、全国の宗教法人数は約18万社(神道系84千、仏教系76千など)あり、信者数は1億6千万人で日本の総人口を上回るようです。
◆ 「宗教法人」をめぐる税務(国税、地方税)…!?
宗教法人は営利を目的としていない「公益法人等」に位置付けられ、税法上は宗教法人の宗教活動には基本課税されず、(他の公益法人と同様)指定された34種類の“収益事業”を営む場合に限って、そこから生じた所得に対して法人税と地方税が課税されます。(お守り、お札、おみくじ等は喜捨金だとして、通常は収益事業の「物品販売業」には該当しないものとされ、また、消費税の申告が必要な場合でも対価性が無いとして課税対象に含まれません。)
固定資産税についても優遇措置があります。
境内建物や境内地は固定資産税が非課税とされ、裁判で争ったケースでは宗教法人の“本部事務所の管理人室”まで非課税が認められています。
以上のとおり、宗教法人が収益事業をしていなければ何も税金は生じないことになりますが、宗教法人が僧侶や牧師など個人に金員を交付すれば、それは“給与所得”になり所得税や住民税がかかります。
宗教法人も税務調査が行われることがあり、もし宗教法人の収入が漏れていた場合、それを僧侶等が個人的に使用している事実が認められれば、給与所得の漏れとして課税されることになります。
◆ 宗教法人への“遺贈寄附”の場合は…?
遺言書に、宗教法人へ寄附を行うことが書かれていた場合はどうなるのでしょうか。(遺留分にも注意が必要です…)
相続税の納税義務者は、遺贈または相続により財産を取得した“個人”とされ、法人が遺贈を受けた場合には(租税回避的でない限り)原則として相続税の納税義務者ではなく、相続人は遺贈した財産を相続税の課税対象から除くことができます。
一般法人に対してであれば、遺贈は受贈益として益金に算入されるところですが、宗教法人にあっては通常収益事業とはならないため、遺贈は基本的に法人税等が課税されることはありません。
但し、不動産の遺贈では、相続人は原則として(取得費と時価とで値上り益が生ずれば)譲渡所得の申告が必要です。(措置法の特例もありますが…)
◆ “相続人”が宗教法人に寄附する場合…?
財産を受け取った相続人が、自身の意思や判断で相続財産から寄附する場合があります。
この場合、国・地方公共団体や特定の公益法人等への寄附で一定の要件を満たせば相続税の課税対象から除く特例を受けることもできますが、宗教法人にはこの特例の適用はありません。
従って、寄附額を相続税の課税財産から除くことはできず、いったん相続税の課税対象に含めて相続税を計算した後、そこから相続人が寄附をすることになります。(債務控除の対象にもなりません…)
なお、宗教法人にした寄附金については、所得税や住民税の「寄付金控除」の対象にもなりません。
ただし、宗教法人が所有する国宝や重要文化財保護のため、あるいは被災建物等復旧のための募金が「指定寄附金」とされた例はあります。
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