2022.07.11
遺産分割の方法には、
(1)現物分割(単独・共有で現物を)
(2)代償分割
(3)換価分割(遺産を売却して分ける)
の3通りがあります。
このうち、(2)の代償分割は、「特定の相続人が現物で財産を相続する代わりに、他の相続人に金銭等を渡す方法」です。
遺産分割協議書には「甲は、第1項に記載の遺産を取得する代償として、乙に対し金〇〇万円を支払う。」と記載します。
その場合、相続人間の話し合いで支払猶予期間を設けたりすることもできます。
代償財産(代償金)を支払った人の相続税の課税価格は、相続した現物の財産の価額から、支払う代償財産の価額を控除できます。
もし将来、この代償財産を支払い終える前に、その人に相続(二次相続)が発生した場合は、支払相手先が親族であったとしても相続財産から控除できる債務となります。
【A】財産の時価を基にして代償財産が決定された時…
代償分割による代償財産の額を決定する場合、相続時の相続税評価額ではなくて、遺産分割時の相続財産の価額(通常の取引価額≒時価)を基に算出するケースがあります。
調停や審判において決定される場合に多いのですが、このようなときは、「相続税を計算する上での代償財産の額」は、支払われる代償財産の金額そのものではなく、代償財産を算出するために基にした“時価”と“相続税評価額”との割合を反映させた「計算上の代償財産の額」を使用します。
なお、代償分割の対象となった財産に、「小規模宅地等の特例」等を適用する土地等がある場合は、その土地等を取得する代償として代償財産を渡すことになっていても、土地等に対する小規模宅地等の特例の適用に制限は受けませんが、「計算上の代償産財の額」を出す上では、評価減される前の土地等の価額を使用します。
ただし、相続人が支払う相続税の合計額は基本変わりませんし、相続人間で協議して、合理的と認められる他の方法による申告も認められています。(相続税法基本通達11の2-10)
【B】死亡保険金を受取る代償で支払われた時…
分割協議を死亡保険金も遺産額に含めて検討し、代償財産の額を決定するケースでは注意が必要です。
死亡保険金は「指名債権」と言われ、死亡時には受取を指定された相続人の固有財産となるものであり、分割協議の対象財産(積極財産)ではありません。
そうすると、遺産額に含めて代償財産の額を計算すると、相続した積極財産の額を超えて代償財産を負担するケースも起こり得ます。
そのような場合は、積極財産を超える部分は贈与があったことになってしまうのです。
【C】3年以内取得費加算を使う財産に代償財産が支払われる時…
代償財産を支払って取得した相続財産を、譲渡する可能性がある場合には注意が必要です。
まず、将来、居住用財産の特別控除や軽減税率の特例を受けようとする場合は、その不動産を取得するために代償財産を支払っていたとしても、特例の適用を受ける上で特に制限は受けません。
しかし、相続税の申告期限の翌日から3年以内に、相続した不動産又は有価証券を譲渡する可能性がある場合は注意が必要です。
支払った相続税について、譲渡所得の計算上「取得費に加算する特例」が適用できますが、代償財産を支払っている場合は、代償財産は全体の財産を基に計算され、対象財産からも払われたとする調整計算が必要(その部分には相続税は課税されていないから)で、加算できる取得費の額が減額されます。