2022.01.04
不動産管理(転貸・保有)会社を設立して、生前対策として行う不動産オーナーの法人化スキームの中心は、相続税と所得税の節税策となります。
その際の重要な判断基準は、「多少のコストや手間が増えても、それなりに節税効果が期待できるなら、長期にわたり法人で運営してみたい」とオーナーと事業承継者等が思えるかどうか、にかかってきます。
◆「法人化」に向けての現状分析・・・!?
法人化スキームの節税効果について検証するには、まず現状での税率を確認する必要があります。
相続税の試算を行う場合、配偶者のいる一次相続と、配偶者がいない二次相続では、税効果を検討する上での税率の考え方が異なります。一次相続で配偶者がどの程度相続するのか。そして、その配偶者の固有の財産を加味して、二次相続での税率はどうなるのか。それらをもとに、法人化の最大のメリットとなる「①オーナーの相続財産積上げ抑制効果(相続税)」を検証します。法人化によって、移転できた不動産所得の金額は、それ以降、相続財産の積上げを抑制できるため、相続税の税率分だけ効果が毎年期待できるのです。
また、第二のメリットである「②法人と個人に係る税率の格差」も検討します。不動産オーナーの所得税の課税所得金額(修繕費の額に注意して正常ベースで…)が、例えば900万円を超える水準だと、所得税33%、住民税10%、事業税5%の計48%の税率が適用されています。(正確には復興税をプラスし、事業税の税効果を減算…)
これが、法人化によって役員給与等で分散支給した上で、法人に残った利益に対し法人税率(地方税含)は約23%(800万円超部分は約34%)で、役員給与も考慮して効果を検証します。
◆ メリットはある。でもデメリットに注意!?
これ以外のメリットにも魅力はありますが、法人化を決断する際には、デメリットの方に注意が必要です。特に、【管理委託方式】だと不動産収入のせいぜい10%が管理料として法人に移せるだけで、【一括転貸方式】でも不動産収入のせいぜい15~20%の所得の移転だけが可能だと言われています。本格的には【所有方式】を目指しますが、法人化によって全てを複式簿記で処理し、(株式所有、役員、譲渡価額、届出など)複雑化する仕組みの中で税理士依頼は必須です。
なお、建物を法人に譲渡する際の消費税(簡易課税を選択していれば第4種)や移転コストが高額になるケースがあります。また、一時的には相続税対策上不利になる(簿価・時価譲渡でオーナーは不動産の所有時より財産が増える)ので、効果が出るまでしばらく時間(年数)が必要です。